先日、千葉に住む義父の家に行ったときのこと。お昼時に、「一人暮らしだと頼む機会がないので、今度来た時に一緒に食べようと思っていた」といって義父が出してきたのがピザのちらしでした。 注文後30分ほどして玄関のベルがなり、父がお財布を持って先に出て行きました。お金を払いピザを受け取るだけ、のはず、なのに、なぜか父が、配達の男の子に何度も「はぁ?」と聞き返しています。どうも、その男の子の言った「最初にお品物のほうよろしいでしょうか?」という言葉の意味がわからなかったようなのです。 うちでピザを頼むときも、やはり届けてくれる人は、そういえばそんな言い方をします。ピザをまず受け取ってもらってから、料金をいただきます、というぐらいの意味で使っているのでしょうが、段取りに慣れていない父にとっては、「・・・でよろしいでしょうか?」といきなり言われても、何を聞いているのだろう?と不思議に思ったのでしょう。 「ご注文のほうは以上でよろしかったでしょうか?」といった言い方は、断定的に言うよりも、ソフトで丁寧に聞こえるから、ということで、ファミリーレストランなどでよく使われているようです。このほかにも、品物をテーブルに置くときの「○○になります」、レジでの「○○円からお預かりします」など、日本語としておかしい、と言われながらも使われている独特の言い回しがあります。 今はまだ違和感がありますが、言葉は生き物ですから、そのうちにこうした言い回しも当たり前のように定着していくのかもしれません。 ただ、もって回った言い回しや「・・・させていただきます」の使いすぎなど、過剰に言葉を重ねる話し方は、お客様にとっては、結局何を言われているのかわからない、ということにもなりかねません。 私はコールセンターで電話応対の仕事をしていますが、日頃の経験から、必要以上に言葉を重ねてしまうとき、というのはどこかに、こちらの責任を曖昧にしておきたい、という気持ちが働いているように思います。言葉を使って仕事をしている者として、自分の発する言葉にまず責任をもつこと、そしてお客様への敬意は表現しつつ、平易な言葉で話ができるよう心がけたいものだと思います。 また、それ以上に思ったのは、言葉を伝えよう、とする気持ちの問題です。 |
column 019 伝わることばと伝えるきもち 勝村 薫 第11期消費生活アドバイザー |
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