私はカスタマー研のメンバーとしては珍しく(?)対面で販売する仕事に従事しています。
いつもベストなコンディションでお客様にご案内できるよう努めるのがプロというものですが、時にはその通り行かないことがあります。それは忙しい時です。

 店頭で接客中、ご案内中に別のお客様からお声を掛けられたり、締め切りが迫っている仕事を意識している時に、お調べに時間が掛かるお問い合わせを受けたりすると、正直に申し上げて「困ったな」「面倒だな」と感じることがあります。
お客様お一人に一人の販売員がいる状況や、時間が十分にあるときであれば落ち着いて応対できるのですが、目の前に大勢お待ちのお客様がいらっしゃる状況ではそうは行かないものです。
こういうタイミングでお申し出をドライにお断りしてしまったり消極的な態度をとってしまっては、お客様を失ってしまうことになりかねません。

さて、どうするか?三つあります。
 一つ目は、
どうしてもすぐご案内が出来ない場合、私はその旨を飾ることなく正直にご説明するようにしています。そうすることによりお時間を頂けることになったり、改めてご来店頂けるという場合があります。
さらに分からないことは正直に分からない、とご説明します。どうしても販売員はご質問全てに答えられなければならない、という気負いが生まれるものですが、適切な販売員に引き継いだり、宿題にさせて頂いたりするようにしています。正直にご案内すると多くのお客様からお時間のご猶予を頂けることが多々あります。
 二つ目は、
忙しい時だからこそ、お客様からのご要望の本質をつかみ取ることや、逆にバランスのとれた提案力を発揮することが私たち販売員に求められます。
録音を撮るからテープレコーダーが欲しい、と息を切らすような勢いでご来店されるお客様には、機械本体の他にテープや電池のご案内もするようにしています。お客様は録音という行為をしたくて来店されている、ということをすぐ掴み取ることが、カギとなるのです。そのためには普段からよくお客様のお話を伺うということが必要であり、商品がどのような組み合わせで「売れる」のかをよく観察することが必要なのです。
 三つ目は、
売り場のメンバー相互間に協力体制が取れているということです。そのためには、すぐに協力できる販売体制の準備を事前にしておかなければなりません。これらは十分に時間があるときはもちろん、日常の僅かな時間を利用してこの準備をすることなのです。  

 いろいろなコツをまとめてみましたが、結局は、私たち販売員が、お客様がご来店されていることに感謝する気持ちを持つことこそが、こういった事態をいい結果に着地させることになるのだと思います。
私が新入社員で配属されたときの上司が、忙しければ忙しいほど売り上げが上がるのだから、ありがたくて仕方ない、とよく私たちに語ってくれました。実際その上司は忙しい時ほど満面の笑みを浮かべて接客をしていました。
そう、忙しいのはお店にとって有り難いことなのです。(意外に忘れがちですが。)
想像を超える忙しさでプレッシャーが掛かるときであっても、気負うことなく落ち着いて行動することが、閉店時間にはかえって充実感や満足感が得られることになります。

 普段からの仕事への姿勢が、忙しいときに活きてくることを改めて確認した上で、日本全国全てのお店の年末商戦の成功を願って。かんばるぞっーー!!



column 053
忙しい時こそ
向井 崇広
Home ColumnTop