NACS29期生の加藤と申します。 コラムと言えるものかどうかお恥かしい限りですが、簡単に最近感じたことを記載させて頂きます。

 私にはどうしたものか、気になった本はどうしても買わずにはいられないという変な癖があり、勢いで購入してしまい、実際読みきれていない本が山とあります。最近実におもしろい本を見つけました。旅行好きの人は多いと思いますが、旅の目的はと聞かれれば、ひなびた温泉宿であったり、美味しい料理や名所旧跡など非日常を味わいたい、溜め込んだストレスを発散したいということが多いんではないかと思います。

 私が見つけたのは、光文社新書の「地団太は島根で踏め 行って・見て・触れる≪語源の旅≫」。著者は「わぐりたかし」です。世の中に知られた種々ことばの語源を辞典で調べ、それが特定の地域や人物から起こっていることを知り、実際にその発生場所、人物に関わりのある場所へ行き、事実確認した内容をまとめ、最後にその地域の美味しい物も紹介するという面白い1冊です。

 一例として「ごたごた」という言葉は、北條時頼に乞われ、来日した鎌倉建長寺2世 南宋の禅僧「兀庵(ごったん)普寧(ふねい)」が、建長寺での自分の歓迎式典の最中、仏殿に安置されていた本尊の地蔵菩薩に対して、「私より格下なのだからここに降りてきて私に挨拶をするのが筋だ」と始まった。それからことあるごとに、「兀庵(ごったん)がごちゃごちゃ言う」「兀庵(ごったん)が、兀庵(ごったん)が」が変じて、「ごたごた」という言葉が誕生したというもの。この章の最後は建長寺のけんちん汁を紹介しています。

 このような具合に、新潟県「のろま」、山形県「つつがなく」、秋田県山形県「うやむや」、静岡県「二の舞」、石川県「ごり押し」、愛知県「火ぶたを切る」「どろぼう」、滋賀県「急がば回れ」、京都府「あいづちを打つ」「らちがあかない」「あとの祭り」、三重県「関の山」「あこぎ」「お払い箱」、奈良県「大黒柱・醍醐味」「もとのもくあみ」、大阪府「縁の下の力持ち」、島根県「地団太を踏む」、愛媛県「ひとりずもう」、徳島県「うだつが上がらない」、熊本県「うんともすんとも」、鹿児島県「チンタラ」という言葉の語源を現地で調査し紹介しています。
読み終わると、思わずよ〜し自分も一度試しに行って見てみようかと思ってしまいます。旅の目的がこのような語源確認というのも面白いと思います。もしかしたら、もう既に読まれた方がいらっしゃるかもしれません。今度は自分で発見した語源を探しに行く旅をしてみたいと思っています。

 さて、もう1冊ご紹介致します。歴史に興味をお持ちの方にお勧めします。その書籍は、新人物文庫の『偽書「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)」事件』。著者は青森県の東奥日報の記者の斉藤光政です。青森県の和田某の自宅の天袋から膨大な古文書が落ちてきた。江戸時代に編まれたその古文書の内容は、日本の歴史を覆すものだが、実は文体や筆使いから昭和の時代に書かれたものであり、他からの盗用あり、創作ありといい加減なものであったということを記者が長年かけて、古文書の大家や歴史の専門家、和田某の親族や近所の者に取材したものを1冊に纏め上げたものです。
この「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)」を真書であるという学者もおり、そのグループとの間で真偽を最高裁まで争っており、読み応えはあります。この騒動は1980年代に全国紙に記事としても掲載されており、ご存知の方もいらっしゃると思います。また、聞いたことがあるかも知れませんが、この本の中に青森県三戸の戸来村(当時)が「キリスト最後の地」であると話題になった「竹内文献」についても触れられております。実はこれも新興宗教の拡大と地元の観光化を目的にしたものであったというのが真相のようです。

  以上、つまらないことをつらつらと書きなぐりましたが、多少なりとも興味を持たれ、「よっしゃ本屋へ行ってみようか」と思った方がいらっしゃれば幸いです。



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