毎日、企業のお客様相談室でお客様からの申し出を電話で受けています。
いまだに朝一番に鳴るコールは「ドキッ」としています。
今まで漠然といろいろなお申し出を承っていますが、ふと、「私の対応でいったい何割くらいのお客様が問題を解決できたのかしら?」と思うときがあります。そういう時は、大抵何かひっかかるものを抱えながら応対をしてしまったときです。

そんなちょっとつまづいてしまいそうなとき、思い出す応対事例があります。
私はこの仕事に就くだいぶ前に、消費生活コンサルタントの講座に通っていました。修了後、ふとしたきっかけから消費生活相談の窓口のお手伝いを2か月ほど経験することができました。といっても週に1日だけなのですが、何せ初めての仕事、どんな相談が寄せられるのか不安と期待でいっぱいの中、電話を取り始めました。
実際に受け始めると、クーリングオフの説明、多重債務の相談先、しつこい訪問販売の相談・・など、講義で聞いた内容の相談が多く、先輩から指導を受けながらそれぞれお答えができ、なんとなく自分が人助けをしているような感覚でいたと思います。

ある日、いわゆるエステサービスの中途解約に関してのご相談のお電話を受けました。詳細な記憶は定かでないのですが、物品購入にサービスが付帯をしているような形で、相談者の人が業者に申し出ても解約(返品)はできないといった内容だったと思います。
もちろん私にとっては初めて経験する内容ですし、自分ではこのような難易度の高い相談は解決できないのではないかと、初めから気分が重くなってしまいました。
ただ、このようなケースは講座でも学んでいましたし、先輩の指導のもと、まずは契約書を送ってもらいチェックをすることから始め、何度か相談者の人とも妥協できる点や解決方法について電話でやりとりをしていました。

すると、最初の私の先入観もありますが、相談者の方の印象はどうも「人任せ」というか重い雰囲気だったのですが、話を重ねていくうちに次第に声も明るくなり「じゃあ、自分でもう一度その店に言ってみます」と自ら動いてくれることになったのです。
相談者の方のほうが私よりもずっと勇気があり、その方がまぶしく見えたことを鮮明に覚えています。

お客様との対応で行き詰ってしまった時、私はこの時の感覚をなるべく思い出すようにしています。語弊があるかもしれませんが「お客様が解決をするんだ」と心で唱えます。
行政と企業の窓口で窓口の役割の違いがあるかもしれませんが、最近では、自分の応対者としての役割は、お客様ご自身で問題を解決していただくためにも、お話しを聴くことぐらいしかできないのではないかと思うこともあります。

だから応対は「筋書きのないマニュアル」と言われるのかもしれないですね。
お客様から教えられること、まだまだたくさんみつけていきたいです。

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応対者の役割とは?
新井 香
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