お客様対応業務に携わって約6年、最初の2年間は管理部門、次の3年間が新規契約等の工事のお申込受付、そして1年前から一般のお客様の受付業務を担当している。 

管理部門に在籍中、私は教育やCSの推進に携わっていた。そのため、次の異動先では、その経験を現場で実践しようとがんばった。全てが理想どおりにはいかなかったが、そんなことまで新鮮だった頃が懐かしい。ところが3年が過ぎようとした頃、あるクレームの解決が遅れてしまった時は、なかなか立ち直れなかった。解決の遅れにより、お客様、社内の関係者に、多大な心労をかけてしまったことが辛かったのだ。周囲には心配をかけまいと笑顔でいるようにしたが、「私はお客様対応には向いていないのでは」との思いと、「この経験を教訓にもっと勉強しよう」との思いが交互し、気持ちが安定しない日々が続いた。 

でも、そんな私に前向きな気持ちを取り戻してくれたのは、同時期に別件でクレームをいただいたお客様だった。その後、転勤が決まり引継ぎに追われていた時、指名でお問い合わせをいただいたのだ。不手際を改めてお詫びしてご質問にお答えすると、「こちらこそ申し訳なかった。でも今日はあなたに説明してもらって、とても良くわかった。これからもあなたに電話する。」とおっしゃるお客様。そこで、転勤することをお話ししたところ、「最後に失礼をお詫びできてよかった。体に気をつけて。」とまでおっしゃって下さり、涙を堪えながらお礼を言った。そのお客様のお陰で私は落ち着きを取り戻し、また一からがんばろうとの思いでいっぱいになった。今でも、その日のことを思い出すと涙が溢れてくるし、お客様には本当に感謝している。

現在の職場では毎日多くのお客様と接している。時にはクレームをいただいたり、失敗したりするが、同じことを繰り返さないために、落ち込みながらも何が原因だったか、なぜ自分はそんなことをしてしまったのかをとことん追究してきた。その繰り返しの中で辿り着いた答えは、心技体の大切さだ。心技体のバランスが悪い時は、疲れていたりして気持ちに余裕がなく、踏み込んだ対応ができなかったり、冷静な判断ができないことがある。逆に良い時は、コミュニケーションを図りやすいし、ありがとうと言っていただいたりもする。このことに気づいた時、どうすれば良い応対ができるようになるか、ひたすら模索していた状態から、スッと抜け出せたのを感じた。今、私がしなければいけないのは、自分自身を育てること。自分の土台が築けていなければ、何をしても身につかないし、それがお客様にも伝わってしまうのだ。 

心技体のバランスを良くすること、特に心の状態を平静に保つのは、想像以上に大変だ。でもお陰様で、そんな私を育てて下さるお客様との出会いや、励ましてくれる皆様に恵まれて、少しずつ前に進んでいる。そして、今後も焦らず着実に、しっかりした土台を築いていきたいと思っている。

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心技体の大切さ
相馬 操 第21期消費生活アドバイザー
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