私は消費生活アドバイザーである。

そして、コールセンター業務をクライアントからお任せいただき、サービスを提供する「一般的には」テレマーケティング会社と称される企業に勤務している。

2年、勉強をともにしている消費者対応研究会のメンバーの大半が、自社の商品やサービスのエンドユーザーと接点を持つ仕事をしているのと違い、私は会社のサポート部門(間接部門)を転々とし、今は採用や教育に関わっている。率直に言うと、資格を活かすという点で言えば、現場でのお客様対応がしたい。そんな気持ちを持ちながらも、いかにこの仕事に絡んでいくか、自分に折り合いをつけながら仕事に向かい合うことに苦心してきたように思う。 

採用については、多いときには1日に15人ほど1人で面接をする日もある。連日、面接をして、採用の連絡をして、導入研修と、センター内の業務研修を受けていただく。現場からのオーダーが多い時は、業務はルーチン化し、恐ろしいことに、慣れてくればやっつけ仕事になりかねない。しかし、何と言っても、「後工程はお客様」。現場の業務に送り出す私たちが、応対者としての資質や適性、勤怠管理のしやすさなどを見極めることこそが、センターの健全な運営に大きな責任を持つことを忘れてはいけない。 

面接の為に来社くださる応募者の大半は私よりも若い。昨今の雇用を取り巻く環境の変化や、あくまで自己実現を目指しその両立の為、理想のライフスタイル実現の為、スキルアップの為などを理由に「アルバイト」として、求人情報誌やWEBの求人サイトを見てコールセンターでの電話応対の仕事を選ぶ方が多い。その一方で、私たちが行うわずか10分ほどの面接で応募者の業務への適性を「すべて」を見抜くことは不可能に近い。

昨年度、私たちの研究会で「エニアグラム(9つの性格)」を用いた応対方法を研究したがこのことは私の行う面接にも大きく活かされていると思う。自分の経験や価値観で相手を決め付けてしまうことがないように、いろんな角度から相手を見て、そして質問をすることを心がけている。できるだけ、今のところ「タイプ9」である私の特権(?):「話しやすい雰囲気」を活かして、狭い面接室でのあの特異な環境下でもリラックスしていただき、ありのままのコミュニケーションの姿を見せてほしいと思い、応募者に向かい合っている。面接に来る応募者の良さはポテンシャルとして見えないところにまだまだ潜んでいると思う。明らかに適性があるという応募者はさほど心配はしないが、人によっては荒海に送り出すような気持ちでアサインする応募者もいる。この潜在能力に、何とか頑張って続けて欲しいと祈りに近い期待を込めて。 

コールセンターでの仕事は、決して楽しいことばかりではなく、つらいことも多い。そんな中、私が与えられた環境の中でできることは、消費者とのコミュニケーションの楽しさや難しさに「おもしろい」と思ってもらえるように教育に関わっていくことだと思う。そのためには自分自身がコミュニケーションについて常に関心を持ち続け、コールセンターで働く皆さんとともに学び、ともに能力を向上させていくことだと思う。

センターで勤務する皆さんと、研修の場で再会する。頑張って仕事を続けていてくれることが何よりうれしい。そして、研修の中での質問や他愛もない会話の中から私の成長につながるような「ネタ」も多い。センターで働く皆さんの「リアル」をありのままに見て、ありのままの声を聞く、そして、ありのままに受け止めて、同じ目の高さで一緒に考えていく。お客様の対応と似ている。 

そして声が掛かれば、いつでもお客様の対応ができる準備はしておきたいと思う。

それまでは、どんな仕事の中でも「お客様対応」の視点を取り入れて、できることは業務の中で実践して行きたいと思う。ようやく「放浪」ではない消費生活アドバイザーとしてのコールセンターの中での自分の役割が見えてきたように思う。

column 029
消費生活アドバイザー放浪記
〜電話応対者の採用面接から学んだこと〜

羽利 泉 第22期消費生活アドバイザー

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