「ご照会番号をお願いいたします」

「出先なんでわかりませんよ」

「あの・・・恐れ入りますが、本人確認が出来ませんとご照会の件にお答えができません。4月から個人情報保護法が全面施行されまして・・・」

「はあ〜?こっちは勤務中の忙しい時間さいて電話してるんだよ?そもそも本人確認たってこっちは大阪に住んでんのにどうやってするんだ。身分証明書もってそっちに行けってゆうのか!?」

「うう・・・申し訳ございません・・・。」

 

4月に入ってから幾度かこのようなやり取りが電話で行われました。
自分に還って考えてみると、出先から企業に問い合わせの電話をするとき照会番号など控えていないのは普通だと思われるので、なおさら恐縮してしまいます。

 施行前まで「そんなCIAやMI6じゃあるまいし、たいした情報もないのにビクビクする必要ないよねー」などとタカをくくっていたのですが、実際施行されてみると、法令遵守と顧客サービスの間には深くて暗い河があることに気付きます。

「○○ですが・・・」と電話がかかってきた場合「はい!××株式会社の○○様ですね!いつもお世話になっております。先日は▲▲のお申し込みいただいてありがとうございました。」といままでロイヤリティの確立なる顧客満足の手法で行っていたことが、場合によっては法律違反でNGになってしまうのです。うーむ困った。

 しかし環境問題しかり、品質安全管理しかり、遠まわりと思われる法令の遵守が、長い目でみれば企業のイメージアップに繋がるに違いないと自分に言い聞かせる他ありませんが、やはりこの辺、法律すれすれのところでうまくやるのが顧客対応のプロなのかもしれません。

 そして今日も電話が鳴る。

「電車に乗ってたらカバンを盗まれちゃって、その中に資料が全部入ってるんでなんにもわからないんですが・・・どうしたらいいですか?」

 うわーん。誰か助けて〜

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個人情報の保護とサービス
田崎 陽子 第22期消費生活アドバイザー
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