ちょっと前になりますが、昨年の秋、ある方の電話応対に大感動しました。

夏休みもとれずに忙しい日々を送っていた私が、やっと1日だけもらえた休暇の日に事件(!?)は起こりました。普段よりもちょっと遅めに起き、シャワーを浴びようと思ったのですがお湯が出ません。何度か蛇口をひねっても冷たい水しか出てこないし、その度にガスの給湯器がピーピー鳴ります。あきらめて取扱説明書を読むとエラー番号から対応の仕方がわかるようになっていました。内容は「もう一度立ち上げてみましょう。改善されなければ、ガスメーターのエラー表示を見てください。」といった感じのものでした。(うる覚えですが・・・。)でも、その時私の住んでいるマンションは大型修繕工事が入っており、室外にあるガスメーターの扉はビニールテープで密封されていました。シャワーが使えないのはとても不便。しかも相手はガスだし、爆発したら大変。そこで、何年か前に給湯器を取り付けてもらったお店に電話をしました。電話に出たのは中年の男性でした。


私:すみません。何度シャワーの蛇口をひねっても水しか出ないんです。給湯器が立ち上がらなくて、エラー番号が××って出るんです。説明書にガスのメーターも見るようにって書いてあるんですけど、今外壁の補修中で扉がテープで固定されてるんです。あっ、でも、台所のガスコンロは使えます。

お店の人:今、外壁補修中っておっしゃいましたよね。外の排気口のところにビニールとか貼ってありませんか?排気する出口を塞ぐと安全装置が働くんです。エラー××っていうのは「立ち消え」ってことですから、一度外を見てみてください。それでだめならすぐ伺いますので。

私:やってみます。ありがとうございます。

お店の人:いえいえ、ご心配でしたらいつでもどうぞ。


 これがその時の会話ほぼそのままです。この後ご指示通りにメーターとは別の、外の排気口を調べたら、やっぱりビニールが貼ってありました。剥がしたらシャワーは完全に復活!うれしかったぁ。もちろん、シャワー復活はありがたかった。ガスの修理を待って貴重な休日がなくなるのも嫌だった。でも、私が一番感動したのは、この方が私のつたない説明に全力で耳を傾け、私の「今外壁の補修中で」という言葉から、「あれっ?もしかして・・・。」と、問題解決の糸口を見つけられた点です。私は状況をできるだけ詳しく言ったほうがいいと思って「メーターのところに行けない理由」として外壁工事の説明をしたのですが、この方はそこから別のポイントを見出したわけです。よくカスタマー研の中で「気付きの重要性」についての話し合いをします。「気付き」とは、お客様や相談者からお申し出をいただいた際、私たち対応者が、プロとして最も適切なアドバイスをするために必要な糸口のようなものです。私はまさにこの方の「気付き」のおかげでシャワーが使えるという喜びとともに、「安心」をもらったのでした。加えて応対も丁寧で、説明もわかりやすかった。この方はカスタマーセンターの人でも、相談受付専門の人でもありません。工事専門の技術屋さんなのにこの的確さ。心がけ次第ということでしょうか。

相手の身になって・・・とはいうけれど、お客様や相談者の「今」をリアルに想像でき、それを元に問題解決までもっていける人は少ないのではないでしょうか。私の担当部署(消費者相談担当)は専門的な知識の提供だけでなく、お客様に心のケアを求められることもしばしば。このすばらしい対応に、感心、感動すると同時に、私もこんな風に相談者と接したい!と強く思ったのでした。休日にすがる思いでかけた1本の電話。この方にどれだけの意識があったかはわかりません。でも、とてもとても大切なことに気付かされたできごとでした。おかげで午後は美術館に行ったり、映画を見たり、予定を何一つ変更することなく、たまの平日休みを有意義に過ごすことができました。ガスもあれから順調です。



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お店の人の「気付き」に気付かされた大切なこと
―ちょっといいはなし―
内山理恵
第20期消費生活アドバイザー
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